AIとIPFと癒しの音楽

特発性肺線維症 idiopathic pulmonary fibrosis (IPF)患者によるIPF関連学術情報の収集とシェア。癒しの音楽もお届けしています。

IPF ブログの年末大掃除と新年に向けて。。。

今年後半、循環器系の治療で胸部の開胸手術を受けました。その手術後ICUで「間質性肺炎が急性増悪(?)」と告げられました。「急性増悪」と聞いた時、この言葉の意味を知っている私はこのままICUを出られず、数ヶ月後に遺体となって退院して家族と再会するんだ!と覚悟しました。入院する前、「じゃ、ちょっと病院行ってきま〜す!」と、軽い感じで出てきたことを後悔しました。

幸いステロイドパルスが奏効したため生きて退院できました。ICUでは苦しかったけど意識があったので治療アルゴリズムを思い浮かべながら、医療スタッフの適切な治療プロセスについてフォローしていました。非常に合理的かつ効率的だったと思います。大変感謝しています。

退院はできたものの殆ど仕事ができなくなってしまいました。コロナ禍前はほぼ毎月海外出張に行き(ものすごいマイル長者!)、日本にいる時も早朝から夜まで働き続ける様なタフな毎日でした。幸いこの3年コロナ禍のおかげというべきか、テレワークで海外との仕事が標準になっていたので、仕事量を可能なレベルまで下げていますが仕事を続けています。

IPFの病名宣告を受けててから、自分の気力体力で可能で、且つ合理的な自分の残り時間でできることを考えた結果、このBlogを始めることにしました。

幸い、ipf.hatenablog.com という「IPF」入りの単純なドメイン名がえれられたので、Key Opinion Leader (KOL)や患者・家族の会等コミュニティとの情報交換ツールにできるかもしれません。これまで、10年以上コイノボリというミトコンドリア病関連の患者・家族と創薬を結ぶ活動をしてきたことが役に立つかもしれません。

koinobori-mito.jp

 

退院後、すぐにGoogle Scholar アラートにIPFを登録して、最近どんな話題があるのかを解析し始めました。まだフルでAI化(機械学習)はできないので、教師データ作りを兼ねて、目を通しながら、取りあえずblogにアップし始めました。GoogleのAIが重み付けをしているとはいえ、かなり玉石混交です。

今後の活動プロセスとして、これまで同様にアラートからの情報を、少し取捨選択しながらアップするのに加えて、いくつかのテーマについて積極的に検索し、いくつかの論文は自分で読みこんで、あるいはサマリーに目を通して、仮説検証をしていこうと思います。また、直接著者にコンタクトをとっていこうと思います。

 

まずは下記の様な仮説について検証していこうと思います。

  • PDE4阻害剤はIPF治療薬の作用機序 (MoA)として有望か?
  • PI3K選択的阻害剤はIPF治療薬の作用機序 (MoA)として有望か?
  • 2型糖尿病との関連性、メトフォルミンはIPF治療薬として有望か?
  • B cell免疫はIPFに関与するか?
  • M2 マクロファージ分極化はIPF治療薬の作用機序 (MoA)としても有望か?
  • DNAM-1は有望な作用機序(MoA)か?
  • pirfenidone と nintedanibの併用による相乗効果はあるか?
  • IPFの治療において間葉系幹細胞(MSC)は効果があるか?
  • IPFの治療において間葉系幹細胞(MSC)由来のエクソソームは効果があるか?
  • ROKC2阻害剤はIPF治療薬の作用機序 (MoA)として有望か?
  • IPFの血管(内皮、上皮)または間質で線維化が制御できない理由は何か?
  • Ferroptosis とIPFの関連性は?
  • ミトコンドリア機能の老化とIPFの関連性は?
  • COVID-19 vaccin による IPF (IIPs)の急性増悪の可能性は?
  • PED5選択的阻害剤を含むPAH治療薬はIPF治療薬の作用機序 (MoA)としても有望か?   等

 

更に、下記の様な疑問について、調査検証していきたいと思います。

  • bleomycin-induced pulmonary inflammationはIPFの動物モデルとして適切か?
  • IPFの線維化した組織を戻す治療可能性のある作用機序 (MoA)は?
  • 抗線維化薬との併用に最適な作用機序 (MoA)と現在投与可能な医薬品は?
  • IPF治療薬の作用機序 (MoA)は他の臓器、肝臓、腎臓等の線維症でも奏功しうるか?
  • IPF治療薬の作用機序 (MoA)として単独分子標的は可能か?
  • 抗体医薬・高分子医薬によるIPF治療は可能か?
  • steroidの効果がない、または増悪する場合はどのような背景からか?
  • 間質性肺炎の急性増悪時には、どのような細胞、作用機序 (MoA)が関わっているか?
  • IPF患者会の活動について、日本の状況はどうなっているか?
  • IPF終末期医療の改善をどの様に行うべきか?癌医療を参考に。 等

 

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この十数年でがんの治療は目覚ましく進歩しただけでなく、終末期における緩和ケアについても、医療と家族、社会の理解により大きく進歩しました。ほとんどのがんの5年生存率は、特発性肺線維症(IPF)を上回っています。

IPFでも、抗線維化薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)が承認されたのは画期的なことと思います。何故なら、治療効果が認められないまでも、何らかの薬ができると、診断が行われる様になり、患者の発見が進み、早い段階で治療開始できるからです。ただ、現状では治療薬による治癒が困難なために、進行抑制が現実的な目標となります。すでに新薬承認への道のりが示されているので、製薬会社がより積極的に創薬にチャレンジできる環境が整ってきたと思います。

創薬研究は大変な事業です。成功率はプロジェクト開始から1%、臨床治験開始からでも10%程度で、1品の成功の裏には2千億円を超えるコストと10年以上の歳月が係ります。それでも果敢に挑戦する研究者、リスク資金を出すベンチャーキャピタル、バイオ企業・製薬会社により、IPFの画期的治療薬が開発パイプラインに上ってくるでしょう。

成功事例があることは希望につながります。希望的楽観的観測は生きる上でとても重要なスキルです。私の場合は、IPFの病名を知らされた時から、「5年生存率が30%って、自分が仕事としてやってきた創薬研究やベンチャー投資に比べれば、楽勝!」と思う様にしています。私とチームは創薬成功率はゼロから始めて1%の確率である新薬承認に導き、ベンチャー投資でも、成功率1%未満の博打のような世界で定期的に数件の成功経験を作ってきました。勿論、全て道のりは苦しいけれど、希望は爛々と照らされています。

どうぞ良いお年をお迎えください。

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癒しの音楽をお届けいたします。

 

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